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測量の日特集Interview/〝地域の守り手〟を継承するために~第2弾~/即応力と環境改善に精通する22社へ

2025年06月03日(火)

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左から宮﨑副会長・吉川会長・髙松副会長

【協会の主な活動】要望活動

【協会の主な活動】年3回の技術講習会

【協会の主な活動】出前講座による次世代育成

【協会の主な活動】親子で参加!測量の日イベント

吉川國夫会長を筆頭に新体制1年を迎えた(一社)長崎県測量設計コンサルタンツ協会の会員22社。先の第48期定時総会において吉川会長は、「業務即応力と経営環境改善に精通した22社を目指す」と述べ、任期を全うする姿勢を示した。


 本紙では6月3日の「測量の日」に伴い、昨年掲載の〝地域の守り手を継承するために〟の第2弾として、吉川國夫会長(㈲吉川土木コンサルタント)、宮﨑直人副会長(㈱C―cot)、髙松隆介副会長(㈱髙松設計コンサルタント)に話を聞いた。


  はじめに、担い手確保への取組を尋ねると、吉川会長は県内工業高校における近年の進路状況に触れ、「ここ数年で進学者が多くなっていると聞く。今後も各家庭において将来を見据えた学歴優先の考えが拡大しつつあるだろう」と推察した。 その上で、「今後増えつつある大卒者であっても、受け皿となる企業側が資格支援や働く環境等をしっかり整備することで、安心して入職でき努力して得た知識・技術を活かしてくれるだろう」と展望を述べた。


資格取得で生涯モデルを明確化


 業務で必要となる資格は測量士や技術士、RCCMなど多種多様。いずれも実務経験を必要とする専門性と難易度が高い試験となっているため、試験合格を目指す社員自身の高いモチベーションが必要不可欠だ。協会はこれまで10年以上に渡り、外部講師等による試験対策勉強会を開催するとともに、受験者同士の交流を通じてモチベーション向上と資格取得を支援してきた。吉川会長は、「講習会を開くだけではなく、努力する社員を応援したい。具体的には、発表会を計画し合格者の熱意や体験談を届けていきたい」と次の一手を指す。


 資格取得が社員のスキル向上や給与アップにつながり、やがては生涯モデル形成へ。協会は、昨年12月に長崎県建設産業団体連合会と長崎労働局が制作した『今こそ!建設業第11版』に記した生涯モデルを、会員へ再度周知徹底する考えだ。吉川会長は「仕事を通して成長していける業界・地元企業ということを広く発信する」と意気込みを語った。


多様化する働き方に対応


 次に、宮﨑副会長からは働き方に関する一つの事例が挙げられた。県内入職者の確保が難しい中、福岡県にグループ会社を持つ同社は福岡県の大卒者を確保した上で、県を跨いだ育成を行っている。「福岡事務所ではベテランと若手が一緒になって業務を行い、将来の管理技術者を育てるモデルを作っている。その中で、福岡事務所で長崎県の業務を精査し、若手が長崎での仕事を通して魅力に触れ、将来的には希望に沿って長崎への異動に対応することも可能だ」。


 また、近年の就業場所に捉われない働き方を示し、「リモート環境や管理がしっかりしていれば仕事は問題ないと考えており、長崎においては離島もあるため、遠方からアプローチする方が容易な場合もある。公共事業に携わりたいという若手もいる中で、こうした仕事の形も一つのモデルになれば」と宮﨑副会長は話す。


 続けて、髙松副会長からは職場環境づくりの成功事例が示された。協会役員の中でも、次世代と最も近い年代である髙松副会長。「会社として社員の人生設計を考え寄り添って在るべき」と話す同社では、子どもを持つ社員の声を基に、昨年度からフレックスタイム制を導入。社員の働き方と取り組む姿勢に変化をもたらした。


 さらに、両副会長からは、男性社員の育休事例も。それぞれの社内で、経営陣や周囲の社員が制度について理解を示し業務をフォローしたという。「社員数が少ない企業では対応が難しいかもしれないが、それでもやっていかないと社員が定着できない。実際に社員らは積極的に協力しており、働き方改革への関心も高い」と吉川会長は述べた上で、今後はこういった成功事例を会員らへ積極的に発信していくとした。


県内企業活躍の場をより多く求めて


 一方で、県内の受注状況を見ると、依然として大手コンサルタント企業が強い傾向。とある市の入札参加資格に関しては、長崎市の人口約39万人を超える『人口50万人以上の自治体における実績』を求められ、県内企業が諦めざるを得ない状況があったことも。協会としては、発注者に対し優秀な技術者の存在を示し、地元企業成長のチャンスを捉えていきたい考えだ。


 また、国発注業務における協会会員の受注率は8%未満。この状況に対し吉川会長は、「要望活動や意見交換会を通じて理解いただき、少しずつではあるが従来は県外企業が受注していた業務も受注できるようになっている。この機会に感謝しつつ、今後は10%に近づけていきたい」と意気込みを述べた。


 髙松副会長も、「長崎河川国道事務所においては、地元に目を向けていただき県内企業の実績が増えている。大変有難く思うとともに、我々としては引き続ききちんとした成果を納めていくことが重要」と同様に口にする。協会は、地元企業ならびに会員相互の連携による〝即応力〟を武器に、「大手企業に相談する前にまずは地域のことは地元企業に」を県・市町に対しても継続して呼び掛けていく方針だ。


最後に一言ずつ


 発注者の皆さまは長崎のまちづくりに対してとても意識が高く、我々としても意識を共にして取り組んでいきたい。まちをつくるのも、人を育てていくのもやはり地域を思う人だということを、多くの人々に伝えていきたい(吉川会長)。


 4月1日、これまで水準点測量に基づいて定めていた国土地理院の標高成果が、衛星測位を基盤とした標高に切り替わった。今後、さらに無人航空機やGPS測量等の最新技術が主流となることから、測量ってカッコイイと思ってもらえるようPRしていきたい(宮﨑副会長)。


 測量という仕事は、なかなか表には見えない仕事なのかもしれない。しかし、なくてはならない仕事、また、地元に貢献したいという気持ちを形にできる仕事だということを理解してもらうため、協会および会社運営に努めていく(髙松副会長)。
 


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